枕然記

春はあけぼの 日暮らし硯に向かひて 久しくとどまりたる例なし

性を語ろう HPVワクチン編

「性を語ろう」シリーズ第4弾

今回はHPVワクチンについてお話したいと思います。

実は、ブログを始める前から、いつかきちんと自分の考えをまとめたいなぁと思っていたもの。

皆さんもご承知の通り、定期接種でありながら積極的勧奨は控えられ*1、各種裁判が現在進行形で係争中*2のセンシティブな話題です。

 

最初に私の立場を明らかにしておきます。

私はHPVワクチンを接種して、現在二児の母になっています。

HPVワクチンは基本的に接種推奨派

副反応とされる一連の症状については、HPVワクチンがトリガーのひとつになった可能性はあると思いますが、薬剤そのものとの因果関係はないと思っています。

とは言え、実際に症状に苦しむ人には、因果関係がないとしても救済措置が必要であり、治療法が確立され、症状が改善されることを切に願っています

 

そして、改めてお断りしておきますが、あくまでこのブログは私個人の経験と見解を述べるものであり、HPVワクチン接種を押し付ける気は一切ありません

ご自身できちんと検討し、医師と相談したうえで、適切な判断をしていただければと思います。

 

HPVワクチンって何?

HPVとは、ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus)の略。

このウイルスが主として子宮頸がんを引き起こすため、日本では「子宮頸がんワクチン」という名称が一般的になりました。

しかしこのHPV、現在では咽頭がんや肛門がん等、子宮頸がん以外のがんの原因となることがわかっています*3

そこで、私は意図的に「子宮頸がんワクチン」ではなく「HPVワクチン」という言葉を使っています。

いくつか信頼度が高く、詳しく説明されているサイトをリンクしておきますので、ぜひご覧ください。

ヒトパピローマウイルス感染症とは|厚生労働省

ヒトパピローマウイルス感染症(子宮頸がんなど) - Know VPD!

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン こどもとおとなのワクチンサイト

 

HPVワクチンの歴史はまだ浅く、世界で初めて発売されたのは2006年。

「がんをワクチンで予防できる時代になった!」と評される、画期的な出来事でした。

日本で承認されたのは2009年。

2013年4月に定期接種として導入されましたが、その後のことは皆さんもある程度ご存知でしょう。

 

ワクチン接種後、身体の痛み、けいれん、意識障害、記憶障害など、『多様な症状』を訴える人が出たことが、次々に報道され始めます。

センセーショナルに映し出される、サングラスをかけ、車イスに乗る少女たちの姿。

それらは、ワクチンへの恐怖と怒りを引き出すのに十分でした。

定期接種導入からわずか2か月後の6月14日、厚生労働省は「積極的な接種勧奨の差し控え」を決定。

その後、数々の調査や研究が進められ、ワクチンと副反応とされる『多様な症状』に、明確な因果関係は認められないことが明らかになりました*4

しかし、積極的勧奨が再開されることはなく、接種率は低迷を続け、子宮頸がんの罹患者は増え続けています。

こうした状況は、WHOからも名指しで批判されていますし、日本国内でも様々な団体から声明が出されています。

HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種の早期の勧奨再開を強く求める声明|公益社団法人 日本産科婦人科学会

https://www.primary-care.or.jp/imp_news/20190115.html
(日本プライマリ・ケア連合学会による声明)

 

一方、HPVワクチン先進国のオーストラリアでは、将来的に子宮頸がんを撲滅することができるかもしれないという研究も報告されています。

2028年、オーストラリアから子宮頸がんが消える? HPVワクチン接種と検診で、激減する子宮頸がん(片瀬ケイ) - 個人 - Yahoo!ニュース

オーストラリアにおける子宮頸がん撲滅までの予測期間:モデリング研究 | kanagawacc

news.yahoo.co.jp 

しかし、これらはおそらく、アンテナを張っておかなければ入ってこない情報でしょう。

積極勧奨が控えられたままの現在、意識的に情報を集めて検討する人とそうでない人の溝は大きく、これが将来的にどのような影響をもたらすのか、医療関係者を始め、多くの人が懸念を抱いています。

 

私がHPVワクチンを接種したワケ

 きっかけは「子宮頸がんワクチン、あんたも打てるなら打っといたら?」という母の一言でした。

2013年4月から、定期接種への導入が決まって話題になっていたので、それを受けて私に声をかけたのです。

後から知ったことですが、親類に子宮頸がんを患った人がいたことも影響していたよう。

私自身、かかりつけの婦人科でポスターを目にしていましたし、癌を予防できるという画期的なワクチンが気にはなっていました。

 

子宮頸がんの怖さと残酷さは、妊娠出産に大きな影響を与える点だと思っています。

進行度が初期で、円錐切除によって根治できたとしても、流産早産のリスクは格段に高まります。

程度によっては子宮、卵巣の全摘出が必要になり、そうなれば妊娠出産は不可能になりますし、手術の影響でストーマになった事例も知っています。

もちろん、妊娠出産が全てではありませんし、子宮や卵巣を摘出したからといって、女性としての価値が失われるわけでもありません。

でも、QOLには確実に影響が出ます。

生涯、再発や転移の不安を抱えていかなければならないことにもなるでしょう。


ちょうど、ピルの定期診察と血液検査を受けるタイミングがあったので、私はそこで先生に相談。

ワクチンによってできるのは新たなウイルスの予防であり、既に感染したものを排除することはできないこと、ワクチンを打ち切るまでは避妊が必要なこと、ワクチンによって不妊になる怖れはないこと等、ワクチンに関する情報や注意点について説明してもらいました。

接種するなら2価と4価から選べるので、両方の資料を持ち帰って検討するようにと言われました。

 

子宮頸がん検診は定期的に受けているし、ひっかかったこともない。

3回の接種にかかる費用約5万は、当然全額自費。

パートナーも固定されているし、受けても受けなくても、結果は変わらないかもしれない。

まだまだ歴史の浅いワクチン、決して安くない額を払う効果は果たしてあるのか…

 

いろいろと考えましたが、私の出した結論は「接種して安心を買う」というものでした。

将来的に子どもを持つことを希望していた私は、「妊娠と同時に子宮頸がん発覚」という事例がどうしても頭から離れなかったのです。

現時点で、子宮頸がんを発症するリスクは低い。

ワクチンを接種すれば、恐らくその可能性をより低くすることができ、何より「打った」という事実が、精神的な支えになる。

そう判断してのことでした。

 

HPVワクチン接種体験記

私が接種したのは、4価のガーダシル。

これは単純に、せっかく打つなら多くの型に対する効果がある方がいいと思ったから*5

実際に接種した際の説明文と予診票が残っていたので、個人情報を伏せて添付します。

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注意事項

1回目の接種は1月29日。

左肩への筋肉注射で、皮下注射や採血より痛みが強かった気がします。

また、当日は少し痛みが残っていましたが、その他に気になる症状はなく、翌日には痛みも軽快しました。

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2回目は4月3日。

実は、直前に全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会が設立されるなど、副反応報道が活発になっていた頃。

全く気にならなかったといえば嘘になります。

でも、1回目の接種で特に問題はなかったですし、高いお金を払って打ち始めたものを中途半端なところで止めるのがイヤで、予定通り接種しに行きました。

接種は同じく左肩で、やはり少し強めの痛み、そして、左腕から指先にかけて軽いしびれを感じました。

しびれはしばらくしておさまったものの、その夜、お風呂で頭を洗おうと腕を上げると、左肩に痛みが走りました。

前回よりも痛みが強く残っているような気がして、報道のことを思い出しました。

因果関係はないと言われているから大丈夫と思う気持ちと、もしかしてという不安。

ここから約1週間、何もしていなければ問題ないものの、腕を上げるのが少しツラい状態になり、左肩を気にする日々が続きました。

ちなみに、私はどんな注射や採血、点滴も、指定がなければ左側にしてもらっています。

右利きであるというのが最大の理由ですが、当時は特に、調律師として右腕を上げる姿勢を取ることが多かったため。

この時、左にしておいてよかったなと心底思っていました。

結局、1週間ほどで自然と痛みは引いていき、ほっと胸をなでおろしたのでした。

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そして、積極的勧奨が中止された後の7月31日、最後となる3回目の接種を受けました。

これもやはり左肩にしてもらい、2回目同様、痛みと軽いしびれを感じました。

ですが、しびれはすぐにおさまり、痛みも2日ほどで軽快。

2回目はなんだったんだろうと思うほど、あっけないものでした。

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これは私の勝手な見解ですが、2回目にあれだけ痛みが長引いた背景には、やはり報道の影響があったのだろうと考えています。

大丈夫だろうと思ってはいても、もしかしたらという思いはどこかにありましたし、1回目とは違って、必要以上に接種部位を気にしていたように思います。

腕を何度も上げてみたり、不必要に動かしたり、そんなこともしていました。

それに比べて3回目は、2回の積み重ねで迷いや不安がなくなり、痛みをそこまで気にすることもありませんでした。

2回目接種後の症状は、言わば「心因性」だったと言えるのではないでしょうか。

心因性」と言うと「気のせい」のように捉えらえてしまいがちですが、そうではありません。

心と体は連動していて、極めて微妙なバランスで成り立っているということなんだろうと思っています。

 

HPVワクチン編 まとめ -HPVワクチンを接種して、二児の母になった私が今望むこと-

冒頭でも述べたように、私はHPVワクチン推奨派です。

誰の元にも平等に正確な情報が届き、一人一人がきちんと検討して判断できるようになるため、またその判断が尊重される土壌を整えるためにも、積極勧奨が再開されることを強く望んでいます。 

さらに、男女とも定期接種になって接種率が上がれば、オーストラリアで予想されているように、子宮頸がんは稀な疾患になると信じていますし、そんな日が来ることを心から願っています。

 

ただ、別に全員が全員、絶対に打たなければいけないと思っているわけではありません。

あれだけセンセーショナルに繰り返し報道されたワクチン、不安を持つ気持ちも十分理解できます。

でも私は、それ以上に子宮頸がんが怖かったし、防ぐ術があるなら手を打っておきたかった。

「子宮頸がん検診をきちんと受ければ、HPVワクチンは必要ない」という意見もありますが、私はそうは思いません。

検診によってできるのはあくまで早期発見。

子宮頸がんそのものを防ぐことはできませんし、不幸にして検診と検診の間に発症し、進行してしまう可能性だってないとは言えません。

現状、子宮頸がんを防ぐ効果が期待できるのはHPVワクチンの接種だけ。

だからわざわざ自費接種したんです。

 

HPVワクチンは、他の定期接種ワクチンと大きく異なる点があります。

それは接種対象年齢。

ある程度、自分で判断できる段階になっているというところです。

だから私は、娘たちが接種対象年齢になったら、必要な情報は全て与え、自分で納得いく判断をしてもらおうと思っています。

もちろん、私自身はワクチンの有益性を信じているし、接種してほしいと思っているので、多少のバイアスはかかってしまうでしょう。

でも、なるべく中立にたって話したいと思っていますし、仮に「受けない」という判断をしたとしても、それはそれでいいと思います。

逆に、日本ではまだ認可されていないガーダシル9*6が、その時点でなお認可されていなくても、娘たちが希望すればなんとかして打てるように手を尽くすつもりで*7

そしてこれは、私の子どもが男の子だったとしても、きっと同じだと思います。


そのためにも、判断材料となる情報は客観的で正確でなければ困るし、必要以上に恐怖心を煽るような書き方は望ましくない。

まして、明らかなデマなんて論外。

特に私は、「HPVワクチンで不妊になる」というデマがどうしても許せません。

それは、私が不妊治療経験者だから。

 

少しでも知識や経験のある方にはわかっていただけると思いますが、メンタルが原因で簡単に生理周期が崩れてしまうように、妊娠するか否かにもメンタル面は大きな影響を与えます。

わずか2ヶ月という短期間ではありましたが、積極勧奨が行われていた時期に対象年齢だった世代は、まさに今、出産適齢期に差し掛かってきた頃になると思います。

「HPVワクチンで不妊になる」というデマに、少なからず不安を抱えている人もいるでしょう。

実際不妊に悩んだ時、「HPVワクチンを打ったからだ!」と言われ、思い悩み、傷つくことだってあるかもしれません。

マイナスの意識は、いとも容易く心身にダメージを与えます。

私はそれが本当に気がかりでならないのです。

 

「ワクチンで自閉症になる」というデマが、何本論文が出ても消えないように、おそらく「HPVワクチンで不妊になる」というデマも根強く残り続けるでしょう。

それでも、私の経験が、接種を迷う方、問題なく接種したもののどこかで不安を抱えている方に届き、少しでもその不安を和らげる助けとなるのなら、私はHPVワクチンを接種して二児の母になった」という事実を訴え続けていきたいと思っています。

*1:2013年6月以降、「定期接種のお知らせ」は届かないものの、希望すれば小学校6年生~高校1年生相当の女性は無料で受けることができます。

*2:東京、大阪、名古屋、福岡の4つの地方裁判所で国と製薬会社2社に対して賠償金を求める集団訴訟が起こされています。また、HPVワクチンに関する研究について、雑誌記事に「捏造」と書かれたことを名誉棄損として訴えた裁判は、雑誌と記者側の全面敗訴となり、記者単独で控訴しています。参考記事→https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/ikeda-muranaka-hanketsu

*3:HPVワクチンの接種は男女とも効果があると考えられており、女児だけでなく、男児の定期接種に組み込んでいる国もあります。

*4:「薬害である」ことを証明しようとした名古屋スタディでも、因果関係なしという結論になり、紆余曲折した末、国際ジャーナルに掲載されています。参考記事→【速報】HPVワクチンと「副反応」に関係がなかったことが明らかに!~「名古屋スタディ」の成果~ | ハフポスト

*5:同じ理由で娘たちのロタワクチンもロタテックを選択しました。

*6:私が接種したガーダシルでカバーできる16.18.6.11型に加え、31.33.45.52.58型の計9価に対応できるワクチンで、海外ではこれが主流となっています。

*7:現在でも、一部医療機関で輸入ワクチンを接種することができます。ただし、定期接種対象年齢でも当然自費です。