枕然記

春はあけぼの 日暮らし硯に向かひて 久しくとどまりたる例なし

性を語ろう ピル編

はじめに

先日、NHKニュースにこんな話題が取り上げられました。

www3.nhk.or.jp

ピルを服用する高校生が、「授業でピルの話になった時、先生が『皆さんの中で飲んでる人はいないと思うけど』と言われて悲しくなった」というツイートを取り上げ、ピルについて正確な情報が広まることを願う内容になっています。

 

私はピル服用経験者です。

二児の母となり、今はミレーナ*1を使用しています。

大学時代には生理不順で婦人科通院し、結婚前にはHPVワクチンを自費接種、結婚後は不妊治療も経験しました。

おそらく、婦人科に関する知識や経験が人より豊かなほうだと思いますし、女性が主体的にバースコントロール*2することが、いかに女性のQOL(生活の質)を上げるかを身を持って知っています。

生理はどうしようもないとあきらめるものではありません。

婦人科に通うことも、女性が自らバースコントロールすることも、決してやましいことではありません。

今もなお、婦人科受診のハードルが高く、偏見も強い状況が少しずつでも改善されることを願って、これから何度かに分けて、自身の体験談をまとめていきたいなと思います。

なお、このブログはあくまで私個人の経験と見解を述べるものであり、ピル服用やミレーナ使用、HPVワクチン接種を押し付ける気は一切ありません。

ご自身できちんと検討し、医師と相談したうえで、適切な判断をしていただければと思います。

 

私がピルを飲んだワケ

私がピルを飲もうと思ったのは、夫と付き合い始めたことがきっかけでした。

当時25歳、私は紆余曲折してようやくたどり着いた*3調律師の仕事が、少しずつ自分のものになって楽しくなっていた頃。

また、夫はまだ学生で、結婚を視野に入れてはいたものの、将来を考えられる状態にはありませんでした。

もちろん、妊娠するような行為をしなければ済む話ではありますが、いい大人がプラトニックを貫けるかと言えば、難しいだろうことは理解していただけるところでしょう。

絶対に妊娠するわけにはいかないし、不安要素を取り除けるならそれに越したことはない。

そう思い、ほぼ確実な避妊効果*4の望めるピルの服用を決めたのです。

 

幸い、私の通っていた婦人科では、避妊目的ということに対してとやかく言われることはなく、ピルのメリットとデメリット、服用にあたって必要なことや注意点を丁寧に説明してもらえました。

ここでもし「避妊目的なんて…」と言われたら、後ろめたく思って諦めてしまう人もいるでしょう。

まぁ、私自身は事前にきちんと下調べしていましたし、服用の意思は固かったので、反論するか病院を替えるぐらいのことはしたと思いますが。

そんなこんなで、ピル服用に向けて動き始めたのでした。

 

ピルって何?

そもそもピルって何ぞやという方もいるかもしれませんね。

経口避妊薬のことで、現在は低用量ピルが主流、英語の頭文字をとってOC(Oral Contraceptive)と呼ばれることもあります。

ピルのメカニズム等については、こちらが詳しく分かりやすいので、ぜひご一読いただきたいと思います。

www.hinin-style.jp

簡単にまとめると

  • 1日1錠飲むホルモン剤
  • 排卵抑制、着床阻止、精子侵入阻止という3つの仕組みで、高い避妊率を実現
  • 基本的に、21錠タイプと28錠タイプがある*5
  • 服用が適さない人もおり、マイナートラブルもある
  • STD(性感染症)は防げないので、コンドームとの併用が必要

こんなところでしょうか。

子宮内膜症等の治療に使われることもあり、不妊治療の前段階として、生理不順を整えるために使っていたという人もいました。

治療に用いる場合は保険適応されますが、避妊目的は適応外。

私が服用していたころは、1シート(1ヶ月分)3000円程度でした。

 

ピル服用体験談

まずはピル服用可能かどうかの問診を受け、服用方法や注意事項等の説明を受けます。

服用することが決まったら、まずは1シート(1ヶ月分)からスタート。

基本的にピルを飲み始めるのは生理開始日なので、生理が来たら服用を始め、1シート飲み終わる前までに受診し、飲み続けていけるかを判断。

その後は3シートずつ購入していき、半年に1度は診察と血液検査を受けていました。

 

私が飲んでいたのは28錠タイプのトリキュラーというものでした。

シートに曜日のシールが添付されており、偽薬も含めて連続して飲んでいけるので、飲み忘れを起こしにくいのがありがたかったです。

とは言え、飲み忘れたことがないわけではありません。

ただ、2日連続で忘れることはさすがになかったので、特に問題はありませんでした。

それよりも、かなり小さめの錠剤なので、うっかり落としてひやっとしたことのほうが多い気がします。

 

私は飲み始めのマイナートラブルもほとんどありませんでしたし、約3年間飲み続けましたが、血栓症を起こすこともありませんでした。

かつて、ピルを飲むと太りやすくなると言われたこともありますが、そういったこともありませんでした。

日々の習慣になってしまえば、そう面倒に思うこともなく、婦人科の定期検診を受ける機会もできて良いなぐらいに思っていました。

 

ピルのメリット・デメリット

一般的なメリットとデメリットはこちらでご確認いただくとして、ここでは、私自身が服用していて感じたメリットとデメリットをまとめたいと思います。

www.hininno-susume.jp

 

メリット

  • 生理周期の安定は精神の安定にもつながる。

私は元々生理不順で、きっちり1ヶ月で来るときもあれば、2ヶ月空くことも珍しくありませんでした。

そんな状態だったので、所謂「危険日」的なものはさっぱり読めません。

女性の生理周期は、精神状態に左右されることもありますし、コンドームだけの避妊では、びくびくしながら過ごさないといけないことは目に見えていました

でも、ピルを正しく飲んでいることで不安に思うことはなかったですし、ホルモンバランスも整うので、精神的にも安定して過ごすことができました。

 

  • 生理周期が読めるので、予定が立てやすい。

ピルの服用を続けていると、「ここからここまでが生理!」とほぼ確実に読めるようになります。

すると、旅行や大切な仕事はそこを避けて組むことができるわけです。

昔々、「女子は試験や試合の結果も生理に左右される」といった話を聞いて本当に不公平だなと思っていましたが、ピルを使えばこれも避けることが可能です。

定期的に飲み続ける以外に、一時的に飲んで生理をずらすといったこともできるので、個人的には、学生さんにこそうまく活用してほしいなと思っています。

 

デメリット

  • とにかくお金がかかる。

先にも述べましたが、避妊目的の服用は保険適応外。

1ヶ月3,000円弱ですから、単純計算で1年当たり約4万円の出費になります。

定期的な診察や血液検査も必要なので、実際には年間5万近くかかっていたはずです。

必要経費と思っていても、やはりこの出費はかなり痛かったですね。

ちなみに、これが保険適応されたとして、3割負担で年間15,000円程度はかかることになります。

これを高いと思うかは人によると思いますが、やはり、ある程度の負担にはなるかと思います。

 

  • 説明が面倒

病院を受診して薬を処方された際、「他に飲んでいる薬はありますか?」と聞かれると思います。

ピルも当然服用中の薬にあたりますし、併用すると血栓のリスクを高める薬*6もあるので、申告が必要です。

その時、かなりの確率で「子宮内膜症か何かの治療ですか?」と聞かれました。

一般のイメージとは違い、治療薬としてきちんと認知されているのはさすが。

ですが、毎回「避妊目的です」と答えるのも、「あぁ」と反応されるのも、正直面倒でした。

他に治療中の疾患がないかどうか把握することは大切ですし、どんな返答なら良かったのかと言われると困るところではあります。

ただ、「あぁ」の中になんとなくマイナスの印象が感じられて、それがいつも少し残念でした。

 

ピル編 まとめ

私がピルを服用していたのは、もう随分前の話になります。

医学は日々アップデートされていますし、1人1人事情も違えば考え方も違います。

飲みたくても飲めない人もいれば、絶対飲みたくないという人もいるでしょう。

 

ただ、私はこう思うのです。

選ぶかどうかは個人の自由。

でも、知らなければ選びようもない。

そして、個人が選んだことに対して、他人がとやかく言うのはおかしい。

 

避妊目的の低用量ピルが日本で認可されてから約20年、まだまだ正確な情報が普及しているとは言い難い状況です。

「ピル=避妊」「女性主体の避妊=ビッチ」という偏見も根強くあります。

私自身は微塵も後ろめたさを感じていなかったので、親にも友人にも堂々と話していましたが、これはかなりレアなケースでしょう。

正確な情報が広まることはもちろん、女性が主体的にバースコントロールすることが市民権を得なければ、ピルへのハードルは下がらないのではないかと思います。

治療目的であれ避妊目的であれ、ピルを飲むことが決して珍しいことではなく、堂々としていられる社会になることを願ってやみません。 

*1:ピルの高い避妊効果と子宮内避妊用具の長期にわたる避妊という効果を併せ持つ子宮内システム。後日、ミレーナ編として更新予定です。

*2:日本語では産児制限や受胎調整と言われ、避妊のほか、不妊手術や人工妊娠中絶等も含まれる。ここでは、いつ妊娠出産するかを自ら決定し、そのために避妊したり、妊娠に向けた行動をとることを想定しています。

*3:大学卒業後、大学院へ進学するも進路を再考して退学。一念発起して専門学校へ入ったという経緯があります。

*4:ピルを正しく使用した場合の避妊率は約99.7%。一般的な避妊法のコンドームは約98%ですが、適切な使用ができていないことのほうが多く、実際の失敗率はかなり高いです。

*5:最長で連続120日間飲める(生理を止める)ものもあります。

*6:口内炎やのどの痛み等に用いられ、市販薬に含まれるものもあるトラネキサム酸は、アメリカでは併用禁忌となっています。